特集

主張

職場と法律(4) 児童養護施設

児童福祉法を活かす若松寮

   私は若松寮で働いています。児童養護施設です。
若松寮は4つのホームがあり、小学校1年生から高校3年生まで定員40人で暮らしています。
 ここにいるのは、親がいない子、虐待を受けた子、家庭に問題があって育児が困難と認められた子、などさまざまです。
 仕事は、一言でいえば「家の親代わり」。
 朝は子どもを起こして、朝食を食べて、学校へ送り出し、帰ってきたら宿題をみて、ご飯を食べて、お風呂にも入る…。子どもが当たり前の生活をする、それを支えることが私たちの仕事です。
 相手は子どもなので、トラブルもしょっちゅうあるんですよね。愛情不足や人間関係の歪み等さまざまな問題を抱えているので、信頼関係を築くことが大切でもあり難しいです。私たちは「いつでもいろんな思いを出しておいでよ」という空気をつくっておいて、機会があればじっくり話を聞いてあげたい。学校のこと、進路のこと、両親のこと、なんでもです。

 私は児童養護施設で働いて、子どもの成長に長く携われることに魅力を感じています。過去にさまざまな辛い経験をしてきた子と向き合い、日々悩むことが多いですが、時間をかけて一進一退しながら少しずつ成長がみられることにやりがいを感じています。
また、若松寮から巣立っていった子たちが遊びに来るときは本当に嬉しいです。「こんな仕事についたよ」とか、「こんな役割をもらったよ」とか3時間も話していくこともあるんですよ。

 昨年9月、名古屋市当局は、「若松寮を指定管理者制度の導入もしくは民営化する」と発表しました。反対運動をするのに、元若松寮の職員が呼びかけて、卒寮生にハガキを送ってもらったんです。
 「私は5人兄妹で、全員若松寮でお世話になりました。心が傷ついた者同士が、生活の中で一生懸命つらさをこらえながら生きています。母が亡くなった時など、私が未成年ということで死亡届も出せなく、先生方が力を貸して下さいました。私たちには帰るところがありません。若松寮が実家なのです。帰る場所をなくさないで下さい。」

 若松寮は児童福祉法に定められている最低基準より手厚い施設ですが、十分とは思いません。民間施設ではさらに厳しい体制があるのが、今の児童養護の現状です。公立施設として少しでも児童養護全体の体制改善につなげることができればと思います。
 若松寮を公立施設として守ることは、民間も含めて名古屋市全体の養護施設を守ることにもつながります。福祉の責任を投げ捨てないで、公立のまま残してほしいです。

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